1)椎間板について説明します
● 腰の骨と骨の間でクッションの働きをします
椎間板が変性(劣化、弾力性がなくなり、もろくなり)して破れて中身が出てくる病気です
2)椎間板をザブトンに例えると分かりやすい
ザブトンの外布が破れて中の綿がとび出した状態です。この綿が神経に触れると脚の痛みやシビレが出ます。
3)ヘルニアを図で示します
後方へ出たヘルニアが神経に触れると下肢に痛みが出ます。
4)椎間板が変性!すると
ヘルニアが起こりやすくなります。
20歳頃から変性が進行し、次第に弾力性が無くなり性能が劣化します。
基質成分であるプロテオグリカンが減少し、線維成分が増加するためです。
5)20〜40代に多く
下位腰椎:(L4/5、L5/S)に多い。
環境要因:座ることの多い人、重いものを扱う人、前傾して躰を捻る。
遺伝的要因:椎間板変性発症に関する遺伝子が複数判明しています。
1)腰痛、下肢痛、しびれ
初期は腰痛だけで、ヘルニアの進行に伴って臀部(でんぶ)から下肢へ痛みが拡がっていきます。
物を持ち上げた時に発症したり、その翌日に発症したり。
腰の違和感が先行し、急激に厳しい痛みで始まることが多いようです。
2)急性期は
腰の反りがなくなり(前弯消失)、側方へ傾いたり(疼痛性側弯)を起こしたり、前へ曲がらなくなったり(前屈制限)します。また立位より座位の方が辛いはずです。
3)進行するにつれて症状が変わります
進行して神経に触れると下肢痛に変わり、
今度は腰を伸ばすと痛みが増強します(後屈制限)。立位が辛くなります。
4)またヘルニアは年齢によっても症状が異なります
若年では痛みによる疼痛性側弯、前弯消失などの姿勢異常や前屈が制限されることが多いですが、中高齢者ではこれら姿勢異常は少なく、歩くと下肢が痛くなり連続で歩けないという間欠跛行が出ます。
5)ヘルニアは程度によっても症状が変わります
ヘルニアの神経根圧迫が軽い間は下肢の痛みが主体で神経の機能は保たれますが、神経組織の圧迫が強くなるほど、痛みやしびれが強くなり神経の機能障害(筋力低下、知覚障害)が出現します。
また、馬尾を強く押すと排尿障害がおこることもあります。
6)ヘルニアの脱出しようとする力が
個々のヘルニアにより異なり症状も異なります
○脱出力の強いヘルニア はどんどん脱出が進行します。
靭帯を破り、ついには流れて移動します。これに伴い痛みも腰痛から臀部痛、下肢激痛へと変遷し、流れたヘルニアは退縮し痛みも改善方向へ向かいます。
どんどん脱出し大きくなり(1)→(3)、流れる(4)と退縮します(5)。
○脱出力の強くないヘルニア は脱出しきれず途中で停滞したり、小噴火を繰り返すタイプになったりします。
停滞すると慢性の痛み、小噴火はギックリ腰を繰り返す原因の一つになります。
7)痛みが過敏になり不快な痛みを呈する神経障害性疼痛を起こす場合があります
ヘルニアにより圧迫された神経根から出た痛み信号が脳までの伝達経路の中で疼痛を増幅したり、痛みの性質を変える(ジンジン、疼くような、触れると痛いなど)場合があります。ヘルニアにより神経根が長期にいじめられたり、外傷が加わると、この神経障害性疼痛が起こりやすくなりますがこの病態は体質、個人差が大きいようです。
時々、ヘルニアはごく軽度なのに不相応な過度の痛みがあり、分かってもらえない痛みとして患者さんはドクターショッピングされます。外傷(交通事故など)が加わると疼痛過敏、神経障害性疼痛を起こす事が多く痛みが誇張されて表現されます。
以下に図で神経障害性疼痛を示します。
1)脱出の程度による分類(MacNabの分類)
○(1)から(4)へと進行する傾向がありますが、途中で停滞する場合もあります。
○一般に脱出程度が強くなるほど痛みも強くなります。
○突然(4)になった当初は強い下肢痛が出ますが、その後改善に向かうことが期待されます。
ヘルニアの急性期は腰に負担をかけると容易に進行します
長時間座ること、重いもの、スポーツは避けてください!
2)脱出部位による分類
○ ほとんどが正中、傍正中型。外側型は少ない。
○正中型は腰痛主体、傍正中型は下肢痛主体。
○外側ヘルニアは下肢の痛みが強く、夜間痛など疼痛過敏を呈し神経障害性疼痛を併発することが多い。
4.診断の方法
1)特徴的な症状から 急激に起こる腰痛、下肢痛、腰痛から始まり下肢痛に移行。痛みが進行、変化する、若い人に多い。
2)検査から MRIですぐ診断できますが、レントゲン所見も大切です。
注 意
3)確定診断のために 稀に椎間板造影や神経根造影が必要になる場合があります。
4)脊髄造影(ミエログラム) 脊髄腔内に造影剤を入れて、レントゲン像で観察するものです。 |