8.ヘルニアの再発について
脱出したヘルニアを手術的に良好に摘出しても、ある一定のリスクで再発が起こることは避けられません。術後数か月以内の早期の再発は脱出準備状態にあったヘルニアが残っていたことが考えられます。手術の後も椎間板は次第に変性(劣化)が進み、分節化(細かくちぎれる)され、浮いて遊離してきます。またその椎間板に非生理的な動きや、異常な過剰な負荷が加わっていると椎間板の変性が進み再発の原因となります。
顕微鏡下のヘルニア手術では3年程度で2〜7%の再手術率があるとされ、同じ椎間に再発するのが約64%とされています。
瘢痕組織で神経が固定され逃げられない
1)再発ヘルニアの手術
ヘルニアの再発は必ず手術が必要ではなく多くの例は保存的に治療できます。しかし、瘢痕組織により神経組織の可動性が悪く、ヘルニアの攻撃から逃げることができにくいため強い痛みが生じ手術に至ることも多いようです。
一般的には初回と同様にヘルニアを摘る手術で治療可能です。
手術は再び初回の手術と同様の後方からのアプローチで、脱出ヘルニアを摘るだけです。しかし神経組織やヘルニアは瘢痕組織に埋まり癒着しているので操作は埋もれた遺跡を掘り探すようなもので操作はやや困難です。しかしMED、MD法で1.6〜1.8cmの皮膚切開で充分摘出可能です。
再発ヘルニアにはPELD法が適した方法です。
PELD法は側方からアプローチするので、瘢痕組織に障害されることなくヘルニアまで到達でき、初回の手術と同じように手術可能です。
側方からの侵入ルートには瘢痕組織はなく
操作の障害にはなりません
再発ヘルニアは固定手術が必要な場合があります。
椎間板変性が強く不安定性(すべり、側弯、局所後弯などを伴う)がある場合や前回の手術で椎間板の摘出量が多く椎間板自体の支持性が低下している(座布団の綿がなく空っぽ)等の場合は再発ヘルニアだけを摘っても良い成績が出ません。固定せざるを得ません。しかし固定は最終選択であることは先述した通りです。
多少の不安定性例は体幹支持力増強のリハビリで回復を図り
固定なしの手術に持ち込めます。
9、椎間孔ヘルニアについて
1)椎間孔ヘルニアとは
〇脊柱管より外側の椎間孔にヘルニアが出たものです。
ここでは一つ上の椎間で分岐し、上から降りてきた神経根を圧迫します。
○やや少ない ヘルニアの5〜10%
○50〜70才代に多い
○症状が強い、強い下肢痛としびれ、夜間疼き、神経障害性疼痛を起こしやすい。
椎間孔内には後根神経節が存在し、この圧迫が疼痛過敏につながります。
○座位や側屈、腹腔内圧を上げると痛む
○保存治療によく反応、1年後60〜80%が疼痛消失
2)手術治療について
下肢痛が強いですが、これを切り抜けると3ヵ月くらいで改善する例が多いようです。
しかしヘルニアが重篤である場合、痛みが強く鎮痛薬が効かない場合があり、手術に至るケースも少なくありません。
〇手術はやや外側からMED(MD)法やPELD法でヘルニアを摘出します。手術成績は良好です。
〇神経障害性疼痛が重篤な場合はヘルニア摘出だけでは改善しきれず固定が必要となる場合があります。